
これまで撮ったたくさんの工場写真の中でも、人物が写っているのはこの1枚だけです。それだけに、自分でもとてもひかれる1枚となっています。
工場地帯の写真をとり始めたのは15年以上前で、それなりに作品の数はたまっていたのですが、写真集という形で世に出す、ということはやはり難しいだろうとずっと考えていました。ところが一昨年の夏、たまたま会社帰りにいつも立ち寄る書店で見つけた写真集「工場萌え」を見て、考えが変わりました。「自分の写真でも、立派な写真集ができるのではないか?」「今やらなければ、きっとあとで後悔するのでは?」。同じ頃、朝日新聞の記事で「工場萌え」が3万部も売れていること、Mixi内に工場を見ることが大好きな人たちの大きなコミュニティがあることも知りました。
その後、何社かの出版社とお話をさせてもらい、たくさんの工程を経てようやく昨年の9月に発売することができました。本を制作するということはもちろんはじめての経験で、編集、デザイン担当の方との打ち合わせに始まり、本の大きさやページ数決め、写真のレイアウト決め、文章の校正、印刷、発売まで、本当にたくさんの貴重な体験をすることができました。中でも印刷会社での立会いは印象に残っています。9月はじめのまだ暑い日でしたが、実際に用紙に印刷した時の仕上がりを、丸1日かけて確認しました。インクのにおいと機械が稼動する大きな音が充満した工場内で、大きな印刷機の前でオペレータの方が、ページごとに色をこまかく微調整しながら何枚もためし刷りをして、机の上に並べてくれます。それを1枚ずつしっかりと確認し、OKを出します。全ページの写真全てを確認し終わったのは、夜7時近くでした。
今撮影に取り組んでいる工場、まだ行ったことのない関西方面の工場地帯など、まだまだ自分では撮りたい場所がたくさんありますが、今後もたくさんの写真を撮っていきたいと考えています。どうもありがとうございました。